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労働災害による影響
①本人:苦痛、精神的ショック、傷害、死亡
②家族:本人以上の心配、悲しみ、以後の生活困窮
③職場:労働力損失、士気の低下、工程遅延、手戻り
④企業:企業イメージ信用低下、仕事の受注減
法的責任、被災者への損害賠償
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それぞれのポイント
・理念(上段):働く皆さんを“大切にします”ということ。
→死んだり、ケガをしても良い人間は一人もいない。
・手法(中段):“全員参加”で問題を解決すること。
・実践(下段):“何でも”話し合えるようにしておかなければならない。
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・ゼロ災運動を進めるには、本当に誰もが納得する「理念」が必要ですが理念」だけでは意味がなく、具体化する「手法」と「実践」が必要となります。
・「理念」「手法」「実践」を三位一体で進めるのがゼロ災運動です。
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理念の実現には、上記の3つの視点が重要。
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・経営トップの災害ゼロに対する強い思いが「ゼロの原則」です。(発想の転換)ある一万人の従業員の職場で、不幸にも労働災害で亡くなられた方の未亡人が「会社にとっては、主人の死によって一万人の中のたった一人を失っただけですが、私や家族は人生のすべてを失いました」という言葉を残されている。
①1万分の1人ではなく「家族にとっては人生のすべて」という生命の重みを認識する。
②災害はゼロでなければならないという家族の持つ痛切な願いを忘れてはならない。
・ゼロ災をミクロの視点、つまり1秒、そして1分、1時間、1日と積み重ねていき、ゼロ災の継続(マクロの視点)をめざす。
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・安全はつかみ所のない対象ですが、危険は具体的に見えやすく把握しやすいものです。(パトロール等で発見できる)
・犯罪の世界でも「先取りの原則」が効果をあげています。
アメリカニュージャージー州で住民の安心感、警察への信頼感を高めるため「破れ窓理論」というものを取り入れ注目を集めました。
→破れ窓理論
1.建物の窓が壊れているのを放置
2.周囲から、建物の地域には誰も注意を払っていないと思われる
3.ゴミのポイ捨てなどの軽犯罪が増える
4.やがて凶悪犯罪にまで波及していく
上記ように、小さなほころびが大きな崩壊につながるので小さなほころびの内に先取りして対処していこうという理論。
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アメリカの安全技師、H.W.ハインリッヒが労働災害5,000件余を統計学的に調べ、計算し、導き出した法則。「死亡・重傷災害1件の背後には、29件の軽傷災害があり、更に300件のヒヤリ・ハットがある」というもの。
・数字の信憑性を問題にするのではなく、ヒヤリ・ハットを軽視せずに一つずつ潰してゆくことの重要性を説明するものです。
↓
・何でも話し合える雰囲気だと、ヒヤリ・ハット体験も報告しやすい。
↓
・明るい職場の雰囲気作りが必要。
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危険の先取りをするには、仕事に関わるすべての人たち“全員参加”で次のことを行わなければなりません。
・それぞれの立場、持場で職場や作業にひそむ危険(問題)を発見、把握、解決する。
・自分の問題として考える。
ゼロ災運動は、この「ゼロ災害へ全員参加」という標語からスタートした運動です。
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上記は、九州大学名誉教授 三隅 二不二(みすみ じゅうじ)氏が行った実験研修の結果です。
「グラフの見方」
・ピンク:研修前の自己責任事故件数
・みどり:研修後 〃
集団の話し合い(集団決定)が『事故を起こしてはいけない』という行動の変化に結びつきやすいという結果になりました。
また、職場には、第一線の作業者でしか分からない危険要因があり正しい情報が、素早く提起されるような、職場風土と職場小集団活動による参加を促すことが、マネジメントにとって大変に重要だと考えられるようになりました。
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労働災害は、人と物が混在している中であるとき異常な接触を起こして発生します。
基本的な原因を調べると、不安全状態や不安全行動を放置した管理面の欠陥が指摘されます。
「労働災害は人、物、管理の欠陥によって起こる」と言ってもよい。
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・ハードウエア対策、
フェールセーフ:異常が起こった時、安全に停止するシステム
フール・プルーフ:正しい方法以外では作業が進まないシステム
・ソフトウエア対策
・上記の他に「KYT、指差し呼称」と言ったヒューマンウエア対策(体験学習する)があります
※職場自主活動をトータルな取り組みとして一体的に行うことによって効果的な活動となります
しかし、これら管理対策を講じてもなお、時として「うっかりぼんやり、近道、省略行為」いった人の行動特性によって思わぬ事故が発生するというの課題が残ります。
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ここからは、視点を変えて「錯覚」についていくつかテストをします。
まず、上の図を見てください。
なんとなくの感覚が掴めたら、次のページへお進みください。
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この図は、人によって見え方が違います。
『中心に向かって沈み込んでいる』ように見える人
『中心が浮き上がっている』ように見える人
また、うず巻きや螺旋(らせん)のように見えますが木の年輪のように閉じた輪が連続しているだけです。
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次のテストです。
どの人が一番大きく見えるでしょうか?
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答えは、どの人も同じ高さです。
近くのものと遠くのものを見比べた場合、遠くのものが大きく見えがちなのです。
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エドウィン・ボーリングが世に広めた「あなたは私の妻と姑を見ている(嫁と義母)」有名な、トリックアートですね。
あなたは、どちらが見えますか?
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顔の各パーツ説明を意識すると「若い娘」に見えます。
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変更されている顔の各パーツ説明を意識すると「おばあちゃん」に見えます。
このように、視点を変えると見えてくる、ものも変わるはずです。
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この字は、なんと書いてあるでしょうか?
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同じ字でも「13」と読めたり、「B」と読めたりします。
あいまいな情報が周囲の環境や前後に受け取る情報の種類によってまったく別の情報として受け取られることがあります。
→手書き文字の場合はカッコ書きに読み仮名を付けるなどの注意が必要です。
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上記のテーマを、紙もしくは頭の中で描いてみてください。
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4種類とも全て正解です。
一番右は少しわかりづらいですが、紙に書いた○を真上から見てその上に△を重ねて書いたということです。(これも正解です)
→口頭だけでの指示では、間違って受け取られる危険性があるので図示するなどして間違いが起こらないようにする工夫が必要です。
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不安全行動を引き起こすヒューマンエラーは、人間特性と言われています。
自分のどんな甘い判断でどんな不安全行動をとるかに気づくことがKYTの第一歩と言えます。
【ヒューマンエラー(人による間違い)】
*錯誤(スリップ):「取り違い」「思い込み」「考え違い」
*失念:し忘れるということ。前後に大きなイベントがあるような場合に起こしやすいエラーと言われています。
*人間の能力の限界:
例)加齢によって近くのものが見えづらい。
騒音でアラーム音が聞こえづらい。
一般人の記憶できる数字は5~9桁程度。
(心理学では、マジカルナンバー7プラスマイナス2と言う)
*知識不足、技量不足:知らないというのは教育不足。
できないというのは訓練不足。
初心者の犯すエラーで、管理上の問題といえる。
【リスクテイキング(危険をおかす行為)】
*違反:最もやっかいなのが『めんどう、多分大丈夫、少しだけだから』といった省略行為、近道反応を生む人間の特性である。
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各段階での対処の際に頼るものと注意点。
1.新人段階:ナレッジ(知識)
→知識を総動員して対処しようとする。
[注意]1度に処理できる件数が非常に少ない。
2.中堅社員段階:ルール(規則)
→対処方法を選択・ルール化し効率的に対処するようになる。
[注意]情報が多くなると正しいルールを誤って適用したりする。
3.ベテランの段階:スキル(技術)
→体がひとりでに動き、速く、正確に、円滑にできる段階。
[注意]動作が習慣化し、自分のやっていることが意識的にチェックされないため「うっかり」「はやとちり」などが出る。初心に返ることが重要です。
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先ほどの「不安全行動には二つの顔」で説明した、ヒューマンエラーやリスクテイキングによって引き起こされる事故や災害を、週または月に1回程度の自主的に行う安全ミーティングのみで防止することは不可能です。
しかし、危険は待ってくれず、現場は多忙な上に、安全衛生は就業時間内に行わなければならないという制限まであります。
これらの課題に対しての手法として生まれたのが、危険予知訓練です。
危険のK、予知のY、トレーニング(訓練)のTをとってKYTと略します。
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・機械・設備の対策(ハードウエア)
・作業への対策(ソフトウエア)
上記の他、最近取り組む企業が増加しているリスクアセスメントなどの職場の自主的対策
・ヒューマンの対策(ヒューマンウエア(体験学習))
4S(5S):整理、 整頓、清掃、清潔(、しつけ)
ミーティングで意識すべき点。
1.危険を危険として気付く感受性を鋭くさせる
2.危険に対する情報を共有する
3.問題を解決していく中で、問題解決能力を向上させる
4.作業の要所要所で指差し呼称を行うことにより集中力を高めさせる
5.チームワークを高め、実践への意欲を強める
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○管理を徹底した場合の波及効果
1.管理監督者が職場への関心を示し、指導・援助する
2.職場自主活動が活発になる
3.危険の発見・対策の提案が、管理へフィードバックされやくなる
4.ハードの改善、ソフトの改善へと結びつく
○職場自主活動の目的
危険の芽は、管理ですべて摘み取ることができるわけではなく第一線の作業者の協力を得て行う職場自主活動も合わせることですべてに近づけることができます。
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ゼロ災は、日々の実践活動がなければ定着しません。
重要なことなので、繰り返しますが「理念」「実践」「手法」は三位一体で進めて初めて活力ある活動として職場に定着します。
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今後の皆さんの職場の災害ゼロの実現に向け、また、今回の内容を積極的に活用していただくことをお願いして講習会を終了します。